2014/08/05(火) 04:28|パレスチナ

ハマースの10年休戦停戦案

 今回のガザ攻撃での死者が1,500人を超えました。発電所、上下水道などのインフラ設備も破壊されています。人が数字になってしまうのは怖いことだけれど。規模、内容ともに2008-2009年のガザ攻撃を超えました。パレスチナの歴史の中でも、最悪のことが起きてしまいました。閉じ込められた人々を殺して行く。1982年の「サブラ・シャティーラの虐殺」を思い起こします。
*サブラ・シャティーラの虐殺
 1982年6月イスラエル軍はレバノンに侵攻、8月末にPLOをレバノンから追放しました。9月、イスラエル軍がベイルート近郊のパレスチナ人難民キャンプを包囲・監視する中で、キリスト教マロン派であるファランジストの私兵集団によって、キャンプ内のパレスチナ人2,000人以上が虐殺されました。

 今回の地上侵攻の前に、イスラエル政府は、ガザ地区北部に住む10万人に避難を勧告しました。その後も「警告」をしてから爆撃していると言います。実際、いま25万人以上が逃げ惑っている一方、(行く場所もないし)家に留まることを選んでいる人も多い、と聞きます。
 ガザ地区の境界は完全にコントロールされ、封鎖され、人もモノも出入りできない(トンネルを掘らないと生活物資も調達できないほど)。そして、ガザ地区の人口密度は世界でも最も高いところの一つ。どこにも逃げ場なんてありません。それをイスラエル政府はよく知っているのに。
 人々が避難しなければならないような状況に追い込む人(政府)は、移動や引越など避難にかかる費用や避難先での住居や仕事を補償しないといけないでしょう? そして、金銭的に補償されたとしても、土地やコミュニティから引き離すこと、明日もわからない暮らしにすること、それがどれだけのことか。

 多くの市民が殺されている、それは戦争法にも反している、という報道を聞きます。でも、誰が殺されるのも辛い。子どもが殺されているとその母親のことを考えるし、ハマースのメンバーが殺されたって、ハマースや他の武装勢力に息子がいる母親のことを考えます。武装勢力のメンバーだって、誰かの家族です。第2次インティファーダの終わる頃、パレスチナの友人に「息子が(大きくなって)武装勢力に入ったらと思うと怖くない?」と訊いたことがあります。友人は「入ったら抜けられなくなるから、入る前に絶対止める」と言っていましたが(でもたいてい家族に黙って入るようだけれど)。
 人数は違うとはいえ、イスラエル兵も60人以上亡くなっています。地上侵攻を続ければイスラエル兵の犠牲者も増えるのは予想されたことだから、イスラエル政府・軍は、パレスチナ人の犠牲はもちろん(!!)、イスラエル国民(兵士)の犠牲もどうでもいいのだな、と感じます。それまでして、何がしたいのか?? イスラエル政府は何を考えているんだ!? 何が目的なんだ!? は、考えても、私にはわかりません。ガザ地区はイスラエルにとって占領政策の実験場、新兵器の実験場、などとも言われているのだけれど、それだけのためにこんなことをするのか??と思ってしまいます。→参照:早尾貴紀「ガザ大虐殺に寄せて」

 しかし、こんな攻撃をしていたらイスラエル兵だって心が壊れてしまうと思います(パレスチナの人々、特に子どもたちの「心の傷」が大きくケアが必要なことは言うまでもありません)。
 レバノン戦争後のイスラエル兵のトラウマを描いている映画に『戦場でワルツを』があります(イスラエルのアミメーション映画2008年ゴールデングローブ賞の外国語映画賞。この映画は話題を呼んだし考えさせられますが、パレスチナ人の視点はゼロです)。レバノン戦争は、イスラエル人にとってのベトナム戦争なのです。今回のガザ攻撃もそうなりうると思います。
 今回のきっかけとなった(と、イスラエルが言う)3人の入植者の殺害を行ったのがハマースではなかった、ということが明らかとなったという点では、後から「大量破壊兵器はなかった」と認めたイラク戦争にも似ていますが。でも、ハマースが殺害したわけでないことは、たぶん最初からわかっていたのです。

 そして、そろそろ破壊し尽くしたから、イスラエル軍は撤退するのかもしれない。
 そして、また数年後にガザを攻撃する??

 このような中で、いくつかの「停戦」「停戦案」が出て来ては消えていきます(本当は、「停戦」という言葉にも抵抗がありますが)。とにかく攻撃が止まって欲しい。私もそう思うけれど、少し考えてみたいです。

 7月中旬、ハマースは、エジプトによる停戦案を拒否した直後、10年間の休戦協定をイスラエルに提案しています。10の条件をイスラエルが受け入れるならば10年間の休戦協定を結ぶというものです。このタイミングでイスラエルが飲みそうにもない条件を出すのはどうだろう、ロケット弾を飛ばしたってイスラエルがこの条件を飲むようにはならないだろう、などの疑問はありますが、内容は真っ当だと思います。PLOもハマースの停戦案を、(1週間かかりましたが)7月23日に承認しています。
 生きていくために、人間の当たり前の権利として「封鎖の解除」を求めるのは当然として、「10年」の休戦協定案、というのもポイントなのだと思いました。また、数年後に爆撃されるのはまっぴらなのです。多くの人(パレスチナの人、パレスチナにかかわる人)が感じているだろうことは、いま、たんに「停戦」しても/たんに「停戦」したら、また1、2年後に同じことが起きるだろう、という確信と恐れです。このガザ攻撃は、2008年12月〜2009年1月、2012年11月に続き、5年で3度目なのです。2012年の攻撃のときの停戦は封鎖緩和が条件でしたが、それは行われませんでした。

*大手メディアが「ガザを実行支配するハマース」という言い方をするので混乱する、とよく聞きます。ハマースは、2006年の(パレスチナ全体での)議会選挙で過半数の議席を得て組閣しました。選挙を経た正式な政府を、日本を含め各国が認めなかったのが、ガザ地区、ヨルダン川西岸地区で別々の「政府」ができてしまった発端です。

 以下、岡真理さんのパレスチナ・フォーラムMLへの投稿/10条件の翻訳を抜粋・転載しました(一つ一つの条件の後に書かれているのは岡さんのコメントです)。

* * * * *
「10年間の休戦協定のための10の条件」

1)ガザとの境界からイスラエルの戦車が撤退すること。

・境界線に沿って内側300メートルから1,5キロに及ぶ区域(ガザ全土の35%、全可耕地の85%)をイスラエルはパレスチナ人のアクセス禁止区域としており、立ち入った者は発砲されます。戦車の撤退は、ガザのパレスチナ人が自分たちの領土内で、命の危険を伴わずに安全に農業を行うために必要なことです。

2)3人の少年殺害後に逮捕された囚人すべてを釈放すること。

・6月、イスラエル人少年3人が誘拐されたあと、イスラエル政府は、少年らが誘拐直後に殺害され、その容疑者も特定できていたにもかかわらず、その情報を隠匿し、少年たちを捜索するための軍事作戦を展開し、数百名を逮捕、その過程で9名を殺害しています。これは、西岸のハマース・メンバーを再逮捕することが目的でした。

3)封鎖を解除し、境界の検問所を商業および人間に開放すること。

・物資の自由な搬入・搬出、人間の自由な移動が禁じられているために、ガザの人々は「生きながらの死」をこの8年間、生きています。

4)国連の監督のもと、国際用の港と国際空港を創り機能させること。

・日本のODAで建設されたガザ空港は破壊され、ローマの遺跡のような廃墟となっています。

5)出漁範囲を10キロまで認めること。

・オスロ合意で認められたガザの領海は20海里でありながら、出漁は3〜6海里に制限され、それを超える出漁は発砲や拿捕、漁船の没収に遭います。そのため、ガザの漁師の多くが漁をすることができません。。

6)ラファ検問所を国際化し、国連およびアラブ諸国の監督下におくこと。

・現在、エジプト側の時の権力のご都合しだいで、ラファハは閉鎖されています。

7)境界に国際軍をおくこと。

8)アル=アクサーモスクでの礼拝許可の条件緩和。

9)ファタハとハマースの和解合意にイスラエルが介入することの禁止

・今回のイスラエルによる攻撃の目的は、ファタハとハマースが和解に合意し、統一政府を発足させたことを脅威とするイスラエルが、これを切り崩すことでした。

10)工業地区の再建およびガザ地区における経済開発の改善。

・ガザは占領が始まった直後から一貫して、その経済開発を妨げる、「反開発(Dedevelopment)」政策がイスラエルによってとられてきました。
【以上、転載終わり】
* * * * *

 どこの国がどんな思惑で書いた停戦案でも、仲介者が誰(どこの国)でも。その後、世界の人たちが圧力をかけて、封鎖と占領を終わらせればいいじゃないか。私もそう思うし、それを目指すしかないのだと思うけれど、すぐに実現できることとも思えません。
 いままで2回できなかった/しなかったのだから。
 今回も、国連の人権理事会でのイスラエル非難決議はアメリカが反対、ヨーロッパや日本が棄権、という状況です。国連や各国政府には期待できない。
(本当に、パレスチナの友人たちに申し訳ないです。日本外務省への抗議の呼びかけはこちら→「今すぐできるパレスチナ支援:ガザ虐殺を容認する外務省に抗議を!」

 かといって。世界中で抗議行動は行われているけれど、イスラエル政府や欧米各国政府の姿勢がいますぐ変わるとも思えない(粘り強く行動し続けるしかないけれど!! 意思は示さないと黙認になってしまう)。

 エジプト政府も信用できない。 
 2008年のガザ攻撃のときはムバラク政権(いわゆる「アラブの春」の前)、2012年のガザ攻撃のときはモルシー政権(ムスリム同胞団)、現在は、クーデターによる軍事政権です。2012年11月の停戦仲介の直後から、モルシー政権に対して新憲法制定などを巡っ
て抗議活動が高まり、2013年2月には軍事クーデターが起きる、というタイミングでした。モルシー政権に問題がなかったとは思わないけれど、軍事クーデターはおかしいと思ったし、パレスチナ、とくガザ地区のためには残念、と思いました。実際、その後、エジプトとガザ地区の境界、ラファ検問所の人とモノの出入りは厳しくなりました(封鎖の強化)。

 毎日、洪水のように、パレスチナや世界各地からの情報が流れ込んできます。まめに考えて発信していくことが難しく、まとめて長文になってしまいました。
 イスラエルにも欧米各国にも日本政府にも腹は立つけど、ただ、とにかく、ガザの人たちに「生き延びて」と伝えたい/願うばかりです(他の地域でもイスラエル軍の攻撃やヘイトクライムで死傷者が続いています)。

 そして、パレスチナのこの最悪の状況の一方で。
 沖縄・辺野古では、海底ボーリング調査が強行されようとしています。
 →「辺野古沖工事強行抗議声明への署名のお願い」(締め切りは8月6日です!)

 アメリカ軍は、このイスラエル軍のガザ攻撃のさなかに、2種類の弾薬をイスラエルに売却しました。日本はイスラエルが購入予定のF35戦闘機の部品をつくっています。オスプレイは、山梨(北富士演習場)には8月19〜22日に来る可能性があるそうです。宮城には11月上旬予定。

 宮城では、いま、東京電力福島第1原発事故で発生した「指定廃棄物」の最終処分場問題が佳境を迎えています。

 最終処分場候補の一つは、なんと、米軍の実弾射撃訓練場(王城寺原演習場)の隣で、実弾射撃訓練の騒音・振動対策のため住民が立ち退かされた場所。実弾はもちろん、オスプレイが処分場に落ちたときのことも、ちゃんと想定しているのでしょうか。

 こんな世の中嫌だ!と思います。声を出して、つながっていきましょう。


この記事のURL:http://himar-diary.jugem.jp/?eid=77


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